映画「THE FIRST SLAM DUNK 」100億突破!
邦画の歴代Top10に入る勢いですね。前回、タイトル
「THE FIRST SLAM DUNK 」の意味
について語りましたが、
今回はそこから見えてきた。
「声優交代の理由」を考察します。
PLUS/SLAM DUNK ILLUSTRATIONS 2 (愛蔵版コミックス) [ 井上 雄彦 ]
前回の考察で
主人公「宮城リョータ」は
実は原作版と原案版の2人が存在していて、
今回の映画は原案版のリョータの話であり、
原案ゆえにTHE FIRSTと冠された。
とお話しましたが、
この2人の宮城リョータが
声優交代のポイントでした。
いきなり話が脱線しますが、
昔、私の働いていたホテルでは常連客に
「20年前に食べたあの料理を食べさせてくれ」
と、リクエストを受けた場合、
昔のレシピ通りに作る事はごく稀で
ほとんどは、現在の材料やレシピに
合わせて「極力昔に近づけた料理」を
出していました。
その理由は、
昔の料理をそのまま出しても
多くの場合失望されるから
です。
食材やレシピは日々改良されています。
お客様の舌も同じく肥えてきているわけですから、
昔のレシピ通りの料理を出しても
いい結果にはならないと答えが出ていました。
このスラムダンクのリメイクを観た時に、
そんな事を思い出してました。
では、
声優変更の理由は今の画に合わないから…?
と思うかもしれませんが、
話はそう単純ではありません。
話をもう一度脱線させます。
そのホテルにいた時に学んだ事のひとつに
「隠し味は隠し通せて初めて隠し味」
というのがありました。
文字通りの意味で料理に加えるエッセンスは
お客様にバレてはいけないという事です。
「何故かわからないけど、とにかく美味い!」
を作り出すことがレシピの妙である訳ですが、
これがとても難しく、隠し味を隠すための
隠し味が存在したり、
材料が変更されたりもします。
あくまで例えですが、クリームソースに
カレー粉を隠し味にするとします。
しかし、どれだけギリギリの量を見極めても、
クリームソースに入れたカレー粉は
ほとんどの人が気づいてしまいます。
これではオリジナルのクリームソースではなく、
ただのカレー風味のクリームソース
になってしまうわけです。
そこで今度はカレー粉の風味を隠すために、
ソースに生のハーブやピンクペッパー等を
刻んで加えます。すると、
カレー粉の風味が抑えられ
風味の奥にある複雑な味が前に出てきます。
つまり、隠し味の前に
わかりやすい隠し味を置いて
ミスリードさせるわけです。
今回この映画を観終わった直後の感想…
リョータが主人公であることに驚き、
こんなリメイクの仕方があるのかと感心し、
原作の最高峰である山王戦の
躍動感あふれる映像に興奮。
随所に散りばめられた
懐かしの名シーンに懐古し、
知られざるリョータの過去と
その家族のストーリーに感動。
映画を出て
「やっぱスラムダンク最高やな!」
そうです。
私がそうだったように、多くの人が
スラムダンクを堪能して劇場を後にしました。
シェフの目論見どおり、
お客はメインの素材が全く別の素材に
すり替わってる事に気が付かないまま
大満足でレストランを去っていったわけです。
前回の考察で
タイトル「THE FIRST」は
この映画が原案であるという意味
とお話しましたが、
この原作ではなく原案であるという要素は
作者がスラムダンクを見に来たファンに
気づかれたくない要素であるわけです。
この隠し味を隠すために
「声優の変更」が行われたんだと推測します。
井上雄彦氏は原作の声優について
こうコメントしました。
その方たちにもしも今回お願いしたら、
その方たちのお芝居を
いったん捨ててもらわないといけなくなる。
つまり、
今回の映画は原案のスラムダンクなので、
キャラの設定(下地)が原作と違う。
セリフの言い回しや感情の込め方等、
当時の声優が原作に当てた芝居は使えない。
という事です。
仮に原作アニメの声優をそのまま起用した場合、
原作の声優さんも超ベテランのプロですから、
監督の指示通りゼロから役を作ることは
可能だと思います。
しかし、私達ファンはそうはいきません。
私達の耳に残る原作の声が
そのまま今回の映画に宿ったら、
そう少なくない人数が
宮城リョータの違和感に
気がついたと思います。
それは周りのキャラも同じく、
作品全体を大きな違和感で包み込んだでしょう。
それはそのはず。
私達が見せられていたのは原作でなく
原案なのですから。
井上雄彦氏はこの
原作を求める客に生じるであろう
原案への違和感を
声優の変更という
さらに大きな違和感で隠そうとしたのです。
これによって、
私達がこの映画に感じた微かな違和感は
「声優が変わってるから」という理由で
流されてしまいました。
よく見ればわかるキャラの微かな違いや
ストーリーの改変、カットされた部分の意味
宮城リョータが全く別人になっている事
全てが巧妙に隠されて
私達は原作の「スラムダンク」を観たと
ミスリードさせられたのてす。
過去の例を見ても
リメイクの際の声優の変更は
批判を受けやすいです。
事実、この作品も声優刷新が発表された際に
炎上しました。
声優が違うなら見に行かないと判断した人も
多数見かけます。
この商業的にもリスクの高い決断をしたのは
原案たる「THE FIRST SLAM DUNK」と
観客の頭の中にある原作の「スラムダンク」を
自然な形ですり替えるためでしょう。
この映画を観終わったあと、
私達の20数年前のスラムダンクの記憶に
原案のエピソードがなんの疑問もなく
すんなり入りんだのも
この判断のおかげと言えます。
隠し味を隠す隠し味ですが、
加減を間違えると
料理が台無しになる事もあります。
刷新されたあとの声優さんにとっても
リスクの高い仕事であったことは
間違いないです。
ただ、興行成績を見る限り、
この判断は大成功だったと言えますね。
SLAM DUNK(スラムダンク)(完全版) 全24巻セット (ジャンプ・コミックスデラックス) [ 井上雄彦 ]
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